予防歯科という言葉が登場してしばらく経ちますが、日本ではまだまだ浸透していませんね。しかしけっして難しいことではありません。普段の歯ブラシをちょっと工夫するだけでおうちでも今日から始められます。ホームケアのポイントをご紹介しています。
予防歯科とはどんなこと?
予防歯科という言葉は知っていても、なかなか内容は知られていません。スウェーデンで行われた大規模調査では、予防歯科に必要なことは「ホームケア」と「プロケア」両方であるという結果が出ています。
しかし具体的には分かりにくいですよね。プロケアは歯科医院で定期的に行う検診と予防処置のことですが、ホームケアは患者さん自身に任されている部分です。ここが簡単にできるよう解説していきます。
- プラークを落としましょう
歯磨きの目的は、食べかすを除くことではないことを知っていますか?正解は、歯磨きの目的はプラークを除去することにあります。このプラークは食べかすではないのです。プラークは細菌のかたまりです。歯垢とも呼ばれています。1mgのプラークには、なんと2~3億個もの細菌が含まれていると言われているのです!そんなものがお口の中にあるなんてびっくりしますね!
虫歯や歯周病などの歯科疾患は、細菌感染によるものです。細菌の感染を予防すれば防げるとも言えます。だから歯ブラシで感染源であるプラークを除去するのです。食べかすは細菌の栄養になってしまうため除去は必須なのです。
毎日プラークがきれいに除去できれば、バイオフィルムも少なく歯石になりにくい状態になります。時間やお金をかけるのではなく、効率よく上手に行えれば良いのです。奥歯の嚙合わせる部分や、歯と歯の間、歯と歯茎の境目が磨き残しの多い部分ですので、よく磨きましょう。
良く磨くといってもひとつの歯ブラシだけでは限界があります。3列植毛ブラシの他にワンタフトブラシやデンタルフロスを使って歯磨きを行い、隅々に届くようにしましょう。
- 細菌を増やさないように気を付けましょう
上記のとおり、お口の中の細菌を増やさないようにするのが虫歯や歯周病を予防するのに一番です。とはいっても歯磨きをして2時間程度でまたプラークが自然と付き始めてしまいます。細菌をゼロにすることは出来ませんが、少ない状態で保つことは出来ます。それにはデンタルリンスを上手に使うのがポイントです。特に寝ている間は、お口の中がまとまった長い時間放置されてしまいます。その間に細菌がどんどん増えてしまいますので、夜寝る前にデンタルリンスを使用しましょう。
歯磨きを寝る前に行う人は多いですが、デンタルリンスはあまり手が出ない人が多いようです。しかし使うのと使わないのでは細菌の数が大きく違ってきます。殺菌作用のあるデンタルリンスであれば、歯科医院で販売されているものではなく市販品から始めても構いません。デンタルリンスの爽やかな味のまま眠るのが楽しみになれば、より一層続けて使って行けそうですね。
- フッ素を歯に残す
デンタルリンスを使用して細菌を増やさない時間を作るのと同時に、フッ素をお口の中に残す時間を増やします。フッ素はフッ化物のことですが、自然界に存在する元素のひとつです。骨を作ったり虫歯を予防する働きをしています。フッ素がどうして虫歯予防に良いのか、ご存じでしょうか?歯は食事をすると、その酸によりリンやカルシウムが歯から溶け出します。これを脱灰といいます。唾液に含まれるカルシウムでも失った成分を取り戻す再石灰化が行われていますが、フッ素を塗布することでより再石灰化を促進させます。
そして歯の表面を覆って、歯の一番外側であるエナメル質を強化し酸に溶けにくくします。さらに酸が作られるのを防ぐ働きもあることから、歯に良い成分として使われているのです。これはかなり頼もしい成分ですね!
この強力な味方であるフッ素を出来るだけ長い時間歯に留める事で虫歯を防げるのは言うまでもありません。だからフッ素入りの歯磨き剤が多いのですね。いくら歯磨き剤にフッ素が含まれていても、大量の水でがぶがぶとすすいでしまっては意味がありません。歯磨き剤の量は1センチ程度にし、すすぎの水は少量で、すすぐ回数も1回だけにしましょう。5秒程度ぶくぶくすれば1回でもしっかりすすげますよ。
これだけで変わる!ホームケア
このたった3つだけでホームケアが変わります。しかもかかる時間はほとんど変わりません。これだけで虫歯にならないのなら、今すぐ家族全員でやってみましょう。
歯科医院で販売している歯磨き剤が手に入ればなお良いのですが、今持っている歯磨き剤でも十分です。できるところから始めていき、習慣づけるよう心がけましょう。
そして予防歯科のもう半分の要素である「プロケア」とは、歯科医院に行って定期的に検査をしてもらうことです。定期的に通うのは時間も手間もかかるようですが、治療にかかる時間とお金のほうが何倍も負担があることが分かっています。ですから予防がより大切なのです。健康が一番楽な道です。楽しく毎日を過ごせるよう、見直してみましょう。