あなたが今何かのお薬を飲んでいる場合、もしかしたら治療を断られてしまうかもしれません。しかしそれはあなたの体が異常だからではありません。ましてやその歯科疾患がかかりつけの歯科医院で治療できないわけでもありません。飲んでいる薬剤が影響するからです。その為に治療を受けられないと困りますので、治療前に服用薬を把握しておきましょう。歯科に伝えるべきお薬をご紹介します。
治療に関わるお薬って?
歯科治療に関係してくるお薬があります。毎日飲んでいる人は習慣になってしまっていて「これが歯科に関係あるの?」と意外な感じがするかもしれませんね。しかし治療に大きく関わるので把握しておくことが大切です。歯科治療前に最低限伝えて欲しいお薬はこちらです。
- 骨粗しょう症の薬
- 神経系の薬
- 抗凝固薬
- 高血圧の薬
- アレルギーの薬
ほとんどの人が自分の身体のことを気遣い、病気があればその症状や禁忌を把握しているでしょう。しかし分かっていてもお薬のプロではないので難しい部分もあります。お薬の名前だけでも分かっていれば覚えておきたいものです。上記の5種類のお薬は、歯科の手術を受けると悪化してしまったり、歯科疾患を招いたりする「ちょっとクセモノ」のお薬なのです。どのような影響があるのでしょうか。
1骨粗しょう症のお薬
骨粗しょう症のお薬はビスフォスフォネート製剤と言います。BP製剤とも言われます。BP製剤は骨のお薬なので、歯や歯を支える顎骨にも影響があります。歯科の分野ではとても関連が深く、治療を行うと悪影響も出てきます。たとえばこのお薬を飲んでいてそのまま抜歯や外科治療を受けると、骨壊死を招くことがあります。歯周組織が腫れ、膿が出て痛みも出ます。
骨粗しょう症のお薬は休薬期間が必要となります。お薬の名前はダイドロネル・フォサマックボナロン・アクトネルベネットなどです。他にも注射薬で骨粗しょう症の治療をしている場合もありますので注意しましょう。
2神経系の薬
神経系のお薬は、副作用によってお口の乾燥や違和感、顎関節の痛みを引き起こす作用のものが含まれます。お口の中の症状が多くあり、お口の乾燥などはそれゆえに唾液が減少して歯周病やドライマウスになりやすくなります。
神経系のお薬にはたくさんの種類があります。三環系抗うつ薬のグループにはイミプラミン・アナフラニール・トリプタノールなどがあります。これらはお口の中の乾燥を招く副作用があります。フェノチアジン系抗精神病薬のグループにはクロールプロマジン・レボメプロマジンなどがあります。こちらも唾液の減少があり虫歯や歯周病になりやすくなる可能性があります。ブチロフェノン系抗精神病薬のグループでは、ハロペリドール・スピペロンなどがあります。上記のような症状が出ていてもいなくても、服用している場合は必ず伝えましょう。
3抗凝固薬
抗凝固薬とは血液をサラサラにするお薬です。血栓を作らないように作用します。つまり血が止まらなくなる可能性がありますので、抜歯などでは要注意です。ワーファリン・プラザキサ・イグザレルトなどがあります。
他にも抗血小板薬としてパナルジン・バイアスピリン・プレタール・エパデール・アンプラーグ・ドルナーなどがあります。冠拡張薬ではペルサンチンが、血管拡張薬ではオパルモンが一般的です。これらの名前のお薬を服用している場合は歯科治療中の出血時に大きく関わりますので治療前に申し出て下さい。
4高血圧の薬
高血圧のお薬を服用している人は年々増加していると言われています。特に歯科治療においても多くみられ、血圧と歯周の関係も深いとされています。高血圧症治療薬にはアムロジン・ノルバスク・アダラートなどのカルシウム拮抗薬のグループと、ニューロタン・ミカルディス・アバプロなどのアンジオテンシン拮抗薬のグループ、カプトリル・レニベース・セタプリルなどのACE阻害薬のグループなどたくさんあります。
他にもテノーミン・メインテート・ケルロングなどのβ遮断薬もあります。これらは血液に関わるお薬です。外科手術などに大きく関わります。麻酔薬ひとつとっても血圧を上げないようなものが必要になります。主治医と相談しながらの治療となりますので早めに伝えておきましょう。
5アレルギーの薬
花粉症の人の多くが服用している抗ヒスタミン剤には、唾液を抑制してしまう作用があります。そのため唾液の作用が得られなくなり口臭が出たり歯周病にかかりやすくなります。アレルギー薬には目薬も含まれていますので、服用とは限りません。アレルギーの薬で喉が渇くと言う人は多くいますので、もしそのような薬を飲んでいるのなら、歯科医院に伝えておきましょ。
お薬手帳は大切です
お薬手帳を持っていますか?もしお薬を飲んでいるのなら、記録しておいた方が良いでしょう。なぜなら、緊急時などにお薬の確認をしなければいけない時があるからです。「自分が飲んでいる薬のことなんだから自分で分かっている」という人もいます。しかし薬には相性があります。薬と治療の相性もあるのです。
「この薬を飲んでいる時はこの治療は無理だなあ」ということになったら、治療が終わるまでに時間もかかってしまいますよね。そうならない為にも治療者に把握してもらうように、手帳に記載しておくよう普段から習慣づけておきましょう。もちろん市販薬も記入します。お薬はなにも飲むものだけとは限りません。どんなお薬が治療に関連してくるか分かりませんので、全てを記載します。目薬なども有効成分が特別なものもありますので、全ての薬剤が書かれていれば理想的ですね。
たかが狭いお口の治療ですが、全身を考えればその一部なのです。そしてお口は身体の中への入り口です。お薬だって全身に作用していますので、歯科治療を行う時は必ずお薬を伝えて下さいね。